担当者インタビュー

プロジェクト開発部
森下 雅人
プロジェクトにかかわる地権者および行政折衝並びに着工に至る準備段階の業務を担当。

プロジェクト開発部
堀 信介
プロジェクトの住宅部分に関する事業推進全般を担当。
商業エリアと住宅を調和させる
「ゆるやかなつながり」
─まずは、お二人が本ブロジェクトに関わられた経緯をお聞かせください。
森下:
本プロジェクトは、2007年10月、目黒駅前の再開発事業の一環として都市開発事業部が主管となってスタートしました。再開発事業は、もともとこの地に住まわれている方や物件を持っていらっしゃる地権者の方々が中心となって進めていくものです。そこに事業協力者コンペに当社を含む4社──第一生命、大成建設、竹中工務店──のコンソーシアムが選定されました。
私が参画したのは翌2008年の4月からになります。当社は4社の代表幹事として、着工の前段階から権利変換にいたるまで、おのおのの意見をまとめたうえで、地権者の方々や行政との折衝、調整を重ねながら事業の方針を決め、実際に行動に移していく役割でした。
堀: 私が携わるようになったのは2011年1月からです。事業を進めていくなかで、当社は住宅を中心に権利を取得していく方針となり、事業関係者との折衝、調整に加え、住宅部分に関するコンセプト、商品企画の立案から販売、着工、品質管理まで、住宅事業全般に関わってきました。
─再開発のテーマ、重視したことはどんなことでしたか?
森下:
まず地形的に、非常に高低差のある敷地という課題がありました。加えて高台である北側、つまり目黒通り側は駅前で完全な商業エリアなのですが、南側は閑静な住宅街。北側の地権者の方々は「にぎわい」を求め、南側の地権者の方々は「静けさ」を求めるという相反する声が出ていました。これをどうやってひとつの敷地のなかに成立させ、調和させるかということが、大きなテーマでした。
そこで出てきたアイデアが、大規模な緑地帯を中心に据えるというものです。これで地形的な問題を解決するだけでなく、緑地を介することで「にぎわい」と「静けさ」の間にゆるやかなつながりをもたせることができ、駅前の賑わいと良質な住環境を両立することで、地権者の皆様のご要望にお応えできたと考えています。
山手線の駅前に、約5,000m²以上の緑地帯(森の広場)が広がっているエリアは他にないという点で希少価値が高く、この物件の大きな特徴にもなりました。
堀:
都心の駅前の開発というと、ふつうは広場も天然石などできれいに整備されているところが多いものです。でも、今回のコンセプトは「樹齢と共に活きる街」というもので、広場全体を植栽や芝生で覆うことで土の香りを感じることができ、直接大地に根差した様々な樹木が末永く街と共に成長していけるような、そんな環境を目指しました。住宅販売時も、駅前にも関わらず緑量の多いこの環境と、高低差を活かした建物計画による見晴らしの良さは、非常に高いご評価をいただきました。
対話を重ねて、
ぶれない「軸」をつくることの大切さ
─ブロジェクトを進めていくうえで心がけたことは何でしたか?
森下:
やはり対話です。さまざまな立場の地権者の方々や関係者がいらっしゃって、それぞれ要望や意見は異なりますし、それ以前にわれわれ事業協力者4社のなかでも調整が必要でした。
これは東京建物らしさだとも思うのですが、当社は自分たちの意見を強硬に主張して強引に進めていくことはしません。意見を尊重しながら、みんなで進めていくというやり方が多いです。もちろん要望のすべてを叶えられるわけではないですし、ときには少数意見を押し切る必要もあるかもしれません。でも、まずは意見を聞く。可能なかぎり対話を繰り返すのは、私たち東京建物の基本姿勢として貫けたと思っています。
堀:
私も同感です。当社のその基本姿勢こそ、多くの関係者との間で、確固たる信頼関係をつくるための大きなポイントであったと思います。当社社員が脈々と受け継ぐ企業文化の一つだと思います。
また、開発するうえで当社が重視しているのは、その施設やエリアの根本にあるべき「軸」のようなものです。デザインや設備などのアウトプットはすべてこの軸にひもづくものであるはずですし、意見が分かれたときに立ち返るべき考えの軸がしっかりしていないと、とくに関係者が多い場合、ぶれてしまうんです。軸をしっかりつくるというのは非常に大切にしています。
森下:
しっかりした軸があるから、違う方向にそれていきそうになっても、きちんと軸に戻すことができる。それも強引に戻すのではなく、きちんと説明し、理解してもらって戻す。東京建物はそういう作業をすごく大切にしている会社ですし、自分もそう心がけています。
この物件でいえば、軸は「樹齢と共に活きる街」というコンセプトに基づいた考え方。理事の方たちもそこはしっかり理解してくださっていました。
入居者、地権者双方の
高い評価から実現した街開きイベント
─建物が出来上がってからのみなさんの反応はどうだったのでしょう?
堀:
住宅部分は、この物件の立地特性も踏まえ、それぞれの特徴を活かした商品性をご提案することで多様なニーズにお応えできるのでは、という仮説をもとに、より多くの方に満足いただけるよう、方向性を二つに分け、サウスタワーは落ち着いた高級感、ノースタワーは華やかなラグジュアリー感を演出しました。結果、2015年夏に開始した第一期販売分全495戸は即日完売、そこから約4か月間で全戸契約完売と、私自身あまり経験のないような大きな反響をいただけたので、安堵しました。
その一方で、「ご入居者の生のお声として、どう感じていらっしゃるか」という点はとても気になっていました。そこで建物が建った後、理事の方々に対して、私たちの「軸」や考え方が建物にどのように反映されているか、直接ご説明する機会を設けさせていただきました。するとその会で、多くの方のお褒めの言葉や喜びのお声を聞くことができ、これまでご入居者の生の声を直接お聞きしたことがなかったため、非常にうれしく、勇気づけられました。
森下: 「目黒花房山フォレスタ」という街開きイベントもやりましたね。
堀: 地域を含めたコミュニティ醸成のきっかけづくりとして、当社が「やりませんか」と提案したところ、みなさんから、「みんなでやるべきだよ」と言っていただきました。結果、準備期間に一年くらいかけ、三日間開催したイベントには、合計一万人ほどの来場もあり、高いご評価をいただくことができました。この物件は大きなプロジェクトということもあり、これまでいろんな意見の対立で、ぶつかることもありましたが、最後は皆で協力して有終の美を飾ることができ、肩の荷が降りた気がしました。社内的にも、ビル事業部本部と住宅事業部本部が二人三脚で進めていくプロジェクトはあまりなかったので、非常に良い経験になりました。
森下:
私もこのプロジェクトを通して仕事観が変わるくらいの刺激を受けました。もともと対話は重視していましたが、バックグラウンドも考え方も異なる多様な人たちと関わる中で、より相手のことを思いやりながら事業を進めていけるようになりました。
東京建物では再開発や建替プロジェクトを複数推進していますが、今回得られた貴重なノウハウの数々は、今後のプロジェクトにおいても大きな付加価値になっていくと思います。これからも街の魅力を高め、街の発展に貢献するプロジェクトを手掛けていきたいですね。ぜひご期待ください。
- ※本ページの掲載内容および社員の所属は取材当時のものです。